病院のかかり方

日本語が話せなくても大丈夫?医療通訳の使い方を解説

日本の病院の「外国語対応」の実際、JMIP と JIH の違い、24 時間の JNTO ホットライン、三者通話の電話通訳、無料の多言語問診票、受診前の準備を解説します。

この記事の医学監修

別府 仙梨Senri Beppu, MD

倉重病院 理事長・循環器内科医

日本語版は、私が医師として確認しています。

日本に住む海外の友人が多く、日本でどのように医療を受けたらいいのか分からず困っているという話をよく聞いていました。また、医師として働く中で救急外来に来られる海外の患者さんの中には「自分の国の言語が通じるところがない。」「どこを受診すれば良いか分からない。」などのご意見をいただき受診するだけでもハードルが高い事をより感じました。何か助けられる手段はないかと考えている時にJapan Medical Pressと出会い関わらせていただきました。日本語を母国語としていない一人でも多くの方が日本で安心して医療を受けられるように分かりやすく正しい情報を提供させていただきたいと思います。

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要点
24 時間ホットライン
JNTO Japan Visitor Hotline 050-3816-2787。英語・中国語・韓国語で、自分の言語で受診できる病院を案内
JMIP と JIH
JMIP は外国人患者を受け入れる病院の体制を認証する制度。JIH は外国人患者向けの推奨リストで、認証ではない
通訳の費用
病院が対面・電話で提供する通訳は通常無料。ただし通訳料を請求する病院もあり(JMIP・JIH の病院では約 5 分の 1)、事前に確認を。民間の通訳者は時間や受診ごとに有料

「外国語対応」の実態

日本の病院が「外国人患者を受け入れます」と言うとき、その中身はさまざまです。海外で研修を受け、診察全体を英語でこなせる医師がいる病院もあれば、常勤の医療通訳者や、通訳を手配してくれる国際部署のある病院もあります。一方で、受付が電話通訳サービスに電話をかけるだけ、あるいは翻訳アプリの入ったタブレットを渡すだけ、という病院も少なくありません。検索サイトではこれらがまとめて「英語対応可」と表示されがちなので、受診前に何ができるのかを具体的に確認することをおすすめします。JNTO の検索ページ自身も、掲載機関であっても状況によって特定の言語に対応できない場合があると注意しています。[1]

言葉の壁を越える 3 つの方法

  • 自分の言語を話す医師。最も直接的ですが、都市部の大病院や一部の私立クリニック以外では少なく、対応言語もほぼ英語に限られます。受付・看護・会計は日本語のみという場合もあります。
  • 対面の医療通訳者(iryō tsūyaku)。通訳者やボランティアを配置する病院があり、英語・中国語が中心で、韓国語・ポルトガル語・ベトナム語・タガログ語に対応する場合もあります。特定の曜日のみ、事前の申し込みが必要というのが一般的です。
  • 電話・ビデオ通訳。最も一般的な形です。病院が遠隔通訳サービスと契約し、医師がサービスに電話をかけ、スピーカーフォンやタブレットを通して 3 人で会話します。これを三者通話(sansha tsūwa)と呼びます。民間サービスを使う病院が多いほか、NPO の AMDA 国際医療情報センターも病院向けの遠隔医療通訳と、患者向けの多言語電話相談を行っています。厚生労働省も、希少言語に対応した遠隔通訳サービスを委託事業として運営しており、登録した医療機関が利用できます。

JMIP と JIH は何を認めているのか

「国際対応の病院」を探すとよく目にする 2 つの名称は、意味が異なります。

JMIP(外国人患者受入れ医療機関認証制度、Japan Medical Service Accreditation for International Patients)は、厚生労働省の施策として設けられ、日本医療教育財団が認証機関を務める制度です。第三者が、多言語による診療案内、通訳の手順、宗教・文化・背景の違いへの配慮など、外国人患者を受け入れる体制が機能しているかを中立・公平に評価します。認証されるのは病院の体制であって、すべての医師が外国語を話せるという意味ではありません。[3] JNTO の医療機関検索では JMIP 認証施設で絞り込めます。[1]

JIH(Japan International Hospitals、ジャパン インターナショナル ホスピタルズ)は認証ではなく推奨リストです。一般社団法人 Medical Excellence JAPAN が日本政府と連携し、治療を目的に来日する医療渡航者を含む外国人患者の受け入れに積極的に取り組む病院を推奨し、英語・中国語・ロシア語・日本語の「JAPAN Hospital Search」サイトで公開しています。JIH の病院は大学病院や専門センターが多く、風邪での飛び込み受診というより、計画的な治療を想定したリストです。[4]

言葉の通じる病院はどう探す?

最も網羅的な公的情報源は、厚生労働省が JNTO と共同で取りまとめている「外国人患者を受け入れる医療機関のリスト」です。掲載施設は各都道府県が選定し、所在地・対応言語・診療科で検索できます。リストでは、入院が必要な外国人救急患者に対応するため都道府県が選んだ拠点的な医療機関と、外国人患者を一般に受け入れる病院・診療所が区別されています。[1][2] このリストが当サイトの病院検索の土台です。言語のほか、病院が申告している支援体制、すなわち医療通訳者ありと国際部署ありで絞り込めます。複雑な病状や長い病歴を説明する必要があるなら、両方を備えた病院が最も安心です。

JNTO の Japan Visitor Hotline

旅行者でどこから始めればよいかわからないときは、日本政府観光局(JNTO)の Japan Visitor Hotline 050-3816-2787 が使えます。365 日 24 時間、英語・中国語・韓国語で対応し、外国語で受診できる医療機関の案内のほか、事故・災害などの緊急時にも対応します。[1] ただしこれは情報提供サービスであり、通訳サービスではありません。医師との会話に通訳として加わることは通常ありません。本当の緊急時はまず 119 番で救急車を呼んでください(日本の救急医療の記事をご覧ください)。

在住者向けの電話相談

多くの都道府県や大都市は、外国人住民向けの多言語相談窓口を設けています。医療制度の仕組みや必要書類を説明し、近くで自分の言語が通じるクリニックを教えてくれることもあります。東京都の場合は「東京都多言語相談ナビ(TMC Navi)」で、フリーダイヤル 0120-142-142、平日(祝日を除く)10 時から 16 時まで、やさしい日本語・英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・ベトナム語・ネパール語・タガログ語などの 14 言語で無料相談できます。[6] お住まいの都道府県名と「国際交流協会」や「多文化共生」で検索すると、同様の窓口が見つかります。

多言語問診票(monshinhyō)

初診は必ず問診票から始まります。無料で公開されている翻訳版の問診票が 2 種類あり、受診前に印刷しておくと大きな助けになります。かながわ国際交流財団が NPO と共同で作成し、自治体国際化協会の支援を受けた「多言語医療問診票」は 23 言語に対応し、内科・小児科など診療科別に分かれています。各ページに自分の言語と日本語が並んで印刷されているので、患者は自分の言語でチェックを入れ、医師は日本語を読めます。[5] 厚生労働省も、問診票・説明資料・同意書を複数の言語で公開しており、医療機関は無料で使えます。厚労省リストの病院の多くはすでに受付に備えているので、「外国語の問診票はありますか」と聞いてみてください。

受診前に準備すること

  1. 症状を書き出す。いつから、何をすると良くなる・悪くなるか、熱の記録など。短い文のほうが正確に伝わります。
  2. 服用中の薬のリストを翻訳する。商品名ではなく一般名(国際的な成分名)で、用量と回数も添えます。お薬手帳(okusuri techō)があれば持参します。
  3. アレルギー・持病・手術歴を書き出し、日本の保険に加入している人はマイナ保険証または資格確認書、パスポートまたは在留カード、紹介状(shōkaijō)があれば持参します。
  4. 事前に電話し、当日その言語の通訳者か電話通訳が使えるか確認します。手配に 1〜2 日かかる病院もあります。
  5. できれば同行者を。医療の会話は専門の通訳者を通すとしても、日本語のできる友人がいれば受付や会計が楽になります。なお、病院は一般に家族、特に子どもに診療の通訳をさせることを避けたいと考えています。

翻訳アプリとその限界

スマートフォンの翻訳アプリや翻訳機は日本の受付で広く使われており、「何階に行くか」「支払い方法」といった手続きにはよく機能します。限界が出るのは診察そのものです。薬の名前の聞き間違い、否定語の脱落(「胸の痛みはない」が「胸の痛み」になる)、そして誤りが起きたことにどちらも気づけないことです。アプリを通して問診をするかどうかは病院や医師によって異なり、手術・麻酔・処置の同意には人間の通訳者を求める病院もあります。アプリは簡単なやり取りの補助と考え、治療を左右する話には専門の通訳者を頼んでください。

通訳などの費用はかかる?

病院が対面または電話で通訳を提供する場合、患者の負担は通常ありません。費用は病院が負担し、公的な補助を受けている病院もあります。ただし、病院は保険診療であっても、診療費とは別に通訳料を患者に請求できます。厚生労働省の 2024 年度の調査では、通訳料を請求している病院は全体の 2.0% でしたが、JMIP 認証または JIH 推奨の病院では 22.6% でした。予約時に通訳料の有無を確認しましょう。[7]自分で民間の医療通訳者や医療渡航支援会社に依頼する場合は、時間単位や受診単位で料金がかかります。一般の通訳経験ではなく医療通訳の研修を受けた人かどうかも確認してください。JNTO のホットラインや TMC Navi などの公的な電話相談は、相談そのものは無料です。TMC Navi はフリーダイヤルで、JNTO のホットラインは通常の 050 番号のため通話料がかかります。[1][6]

用語集

  • 医療通訳(iryō tsūyaku)— 医療通訳者・医療通訳
  • 電話通訳(denwa tsūyaku)— 電話による通訳。三者通話(sansha tsūwa)— 医師・患者・通訳者の 3 者での通話
  • 国際医療センター/国際部署(kokusai iryō sentā / kokusai busho)— 外国人患者の窓口
  • 外国語対応(gaikokugo taiō)— 外国語でのサービス
  • 問診票(monshinhyō)— 初診時の質問票
  • お薬手帳(okusuri techō)— 処方薬の記録手帳
  • 紹介状(shōkaijō)— 他院への紹介の手紙
  • 「英語を話せる先生はいますか?」(Eigo o hanaseru sensei wa imasu ka?)
  • 「通訳をお願いできますか?」(Tsūyaku o onegai dekimasu ka?)

よくある質問(FAQ)

JMIP 認証病院には必ず英語を話す医師がいますか?

いいえ。JMIP は多言語の診療案内や通訳の手順など、外国人患者を受け入れる体制が整っていることを認証する制度です。医師との会話は通訳者や電話通訳を介する場合があります。

友人や家族に通訳してもらえますか?

受付や会計では同行者が助けになります。診察そのものについては病院は研修を受けた通訳者を望み、家族、特に子どもに通訳を頼ることは一般に避けます。同行した家族や友人では正確な通訳が難しい、または通訳させることが適切でないと判断した場合、病院は別の通訳手段を確保するよう努めます。病院が通訳を用意できるか確認してください。

JNTO のホットラインは診察中に通訳してくれますか?

いいえ。ホットラインは自分の言語で受診できる病院の案内などの情報提供と、緊急時の支援を行うものです。受診中の通訳は病院が手配します。

電話通訳は無料ですか?

病院が提供する場合、患者の負担は通常ありませんが、通訳料を請求する病院もあります。国の 2024 年度の調査では全病院の 2.0%、JMIP 認証または JIH 推奨の病院では 22.6% でした。予約時に確認してください。

出典

  1. 日本政府観光局(JNTO) — 具合が悪くなったときのガイド(Japan Visitor Hotline・医療機関検索) jnto.go.jp
  2. 厚生労働省 — 外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリスト mhlw.go.jp
  3. 日本医療教育財団 — 外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP) jme.or.jp
  4. Medical Excellence JAPAN — Japan International Hospitals(JIH) medicalexcellencejapan.org
  5. かながわ国際交流財団 — 多言語医療問診票(23 言語) kifjp.org
  6. 東京都保健医療局 — 東京都多言語相談ナビ(TMC Navi) hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp
  7. 厚生労働省 — 令和 6 年度「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」概要版(PDF) mhlw.go.jp

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本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断・治療の代替ではありません。必ず医師にご相談ください。

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