家族と子ども

日本で出産するには?妊娠届から出産費用までわかりやすく解説

外国籍の住民向けに、妊娠届と母子健康手帳、妊婦健診の受診票、分娩施設の選び方、出産費用と出産育児一時金50万円、出産後の手続きを解説します。

この記事の医学監修

別府 仙梨Senri Beppu, MD

倉重病院 理事長・循環器内科医

日本語版は、私が医師として確認しています。

日本に住む海外の友人が多く、日本でどのように医療を受けたらいいのか分からず困っているという話をよく聞いていました。また、医師として働く中で救急外来に来られる海外の患者さんの中には「自分の国の言語が通じるところがない。」「どこを受診すれば良いか分からない。」などのご意見をいただき受診するだけでもハードルが高い事をより感じました。何か助けられる手段はないかと考えている時にJapan Medical Pressと出会い関わらせていただきました。日本語を母国語としていない一人でも多くの方が日本で安心して医療を受けられるように分かりやすく正しい情報を提供させていただきたいと思います。

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要点
出産育児一時金
子ども1人50万円、施設に直接支払い
妊婦健診
受診票で14回分を助成
出産後
出生届14日以内、在留資格30日以内

妊娠の確認

日本では、妊娠に関する診療はかかりつけ医ではなく産婦人科で受けます。市販の検査薬で陽性が出たら、妊娠5〜6週目(最終月経の開始日から数えて5〜6週目)ごろに産婦人科を受診してください。医師が超音波検査で妊娠を確認し、出産予定日を推定します。正常な妊娠は健康保険上の「病気」ではないため、初期の受診は原則として自費です。出産予定日を書いたメモをもらっておくと、役所での手続きに役立ちます。

妊娠届と母子健康手帳

妊娠が確認できたら、できるだけ早く区市町村の窓口や保健センターに妊娠届を出します。すると母子健康手帳が交付されます。妊婦健診の記録、出産の経過、子どもの発育や予防接種を幼児期まで記録する冊子で、健診の受診票や両親学級の案内も一緒に受け取ります。在留カードを持参してください。[3]

こども家庭庁は、英語・中国語(簡体字)・韓国語・ベトナム語・ポルトガル語・ネパール語・タガログ語・インドネシア語・スペイン語・タイ語の10言語版の母子健康手帳を公開しています。多くの自治体では希望すれば外国語併記版を受け取れるので、届出の際に相談してください。[2]

妊婦健診と受診票

妊婦健診は全国共通の目安で、妊娠23週までは4週間に1回、24〜35週は2週間に1回、36週以降は毎週受けます。自治体は母子健康手帳に付いてくる受診票で14回分の健診費用を助成しています。たとえば東京都では14回すべてが共通単価で公費負担され、超音波検査などの追加検査の助成回数は区市町村によって異なります。[3] 助成額は自治体ごとに違うため、受診によっては自己負担が生じることを見込んでおきましょう。受診票は区市町村が交付するもので、基本的に契約医療機関でのみ、通常は同じ都道府県内で使えます。同じ都道府県内であっても別の区市町村に引っ越した場合は、すぐに転居先の役所の保健担当窓口に連絡してください。前の住所の受診票は新しいものへの交換が必要になることが多く、交換前に自費で受けた健診は払い戻されないことがあります。[3]

2026年4月から、妊婦へのRSウイルスワクチンが定期接種に加わりました。妊娠28週0日から36週6日までの間に1回接種し、生後数か月の赤ちゃんをRSウイルス感染症の重症化から守ります。接種の受け方や自己負担の有無は区市町村によって異なるので、妊娠28週になる前に、かかりつけの産科か役所の保健担当窓口に確認してください。[8]

どこで出産する?

人気の施設は早く埋まるため、妊娠20週ごろまでには分娩施設を決めるのが一般的です。施設は大きく3種類あります。

  • 病院:小児科や救急を備えた総合病院・大学病院。ハイリスク妊娠の場合の標準的な選択肢で、無痛分娩に対応している可能性が最も高い施設です。
  • 産科クリニック(診療所):産科医が運営する小規模な民間施設。個室や食事が充実していることが多く、合併症のない出産の多くはここで行われます。
  • 助産院:助産師が運営し、医療的な鎮痛を用いない低リスクの自然分娩を扱います。合併症が起きた場合は提携病院に搬送されます。

厚生労働省は全国の分娩施設を検索できる「出産なび」を運営しており、各施設の費用、サービス、無痛分娩の有無などが公開されています。[1] 外国語で対応できるクリニックや病院を探すには、当サイトの医療機関検索(/ja/find)で言語による絞り込みをお使いください。

出産費用はいくら?出産育児一時金50万円

出産は病気ではないため、2026年9月時点では、正常分娩には健康保険が適用されず、施設が独自に定めた料金を支払います。その代わり、日本の健康保険に加入している人には、被用者保険でも国民健康保険でも、外国籍の住民やその被扶養者を含めて、2023年4月以降の出産について子ども1人あたり50万円の出産育児一時金が支給されます。[1]

ほとんどの場合、この50万円を自分で受け取る必要はありません。直接支払制度では、施設で書類に署名すると保険者から施設に50万円が直接支払われ、退院時には差額だけを支払います。費用が50万円を下回った場合は、差額を保険者に請求できます。[1]

この仕組みは変わる予定です。2026年6月5日に公布された健康保険法等の改正により、出産育児一時金に代わって、保険者が分娩施設に直接支払う給付が設けられ、正常分娩の標準的な費用には自己負担が生じなくなります。あわせて、すべての妊婦に定額の現金給付が行われます。施行は公布後2年以内で、具体的な日は今後政令で定められます。金額はまだ決まっておらず、施設の選択により、当分の間は現行の出産育児一時金の適用を受け続けることもできます。それまでは上記のルールが適用されます。[7]

差額は発生しますが、多くの場合は限られた額です。厚生労働省の資料によると、2024年度の正常分娩の出産費用は全国平均で約52万円と、一時金を約2万円上回っています。ただし地域差は大きく、個室料などの選択的な費用を除いても、熊本県の約40万円から東京都の約65万円まで幅があります。[4] 都心部や、ホテルのようなサービスを提供する民間クリニックでは多めに見積もっておきましょう。自治体独自の上乗せ助成がある場合もあるので、お住まいの区市町村のページを確認してください。帝王切開などの医療処置が必要になった場合、その部分には通常どおり健康保険が適用されます。

無痛分娩はできる?入院日数・言語対応

無痛分娩(硬膜外麻酔)は、欧米の多くの国に比べるとまだ一般的ではありません。主に大規模な病院と一部のクリニックで実施されており、平日の日中に限られることも多く、通常は基本料金とは別に追加費用がかかります。鎮痛を希望する場合は、施設を選ぶ段階で対応の有無、実施時間、費用を確認してください。出産なびでは無痛分娩に対応する施設を調べられます。[1]

入院期間は多くの国より長めで、経腟分娩で5日前後、帝王切開では1週間程度が目安です。その間に助産師から授乳や沐浴の指導を受けてから退院します。

言語対応は施設によって異なります。大学病院や都市部の大規模病院には英語を話す産科医や通訳サービスがあることが多い一方、クリニックの多くは翻訳アプリで対応しています。初診やバースプランの相談には日本語のわかるパートナーや友人に同行してもらい、この記事末尾の用語集にある基本的な言葉を覚えておくと安心です。

産休・育休と給付

会社員は出産予定日の6週間前から出産後8週間までの産前産後休業(産休)を取得でき、その後は原則として子どもが1歳になるまで、父母のどちらも育児休業(育休)を取得できます。協会けんぽなどの被用者保険に加入していて、産休中に会社から給与が支払われない場合は、出産手当金として、出産日以前42日から出産翌日以後56日までの範囲で、標準報酬日額の3分の2が支給されます。[5] 育児休業給付金は雇用保険から別に支給され、休業開始から180日までは賃金の67%、その後は50%です。2025年4月からは、子の出生直後の一定期間に両親がそれぞれ14日以上の育児休業を取ると、最大28日間「出生後休業支援給付金」(賃金の13%)が上乗せされます。合わせて給付率は80%となり、育休中は社会保険料が免除され給付金も非課税のため、手取りではおよそ10割に相当します。配偶者が働いていない場合やひとり親の場合は、本人の取得だけで対象になります。[9]自営業者や学生など国民健康保険の加入者は、出産育児一時金は受け取れますが出産手当金の対象にはなりません。

出産後の手続きと期限

外国籍の親にとって特に重要な期限が2つあります。出生届は、出生日を含めて14日以内に役所に提出しなければなりません。届出用紙の出生証明書の部分は病院が記入してくれます。両親がともに日本国籍でない場合は、さらに出生後30日以内に地方出入国在留管理局で子どもの在留資格取得の申請が必要です。[6] 母国の大使館・領事館への出生登録も行い、医療費が保険でカバーされるよう子どもを健康保険に加入させてください。

乳児健診・予防接種・産後ケア

登録が済むと、赤ちゃんは日本の公的な乳幼児保健の対象になります。自治体は決められた月齢で無料の健診を実施しており、一般的には3〜4か月、1歳6か月、3歳、多くの地域では1か月と9〜11か月にも行われます。B型肝炎、ロタウイルス、肺炎球菌、五種混合(DPT-IPV-Hib)、BCG、麻しん風しん、水痘、日本脳炎などの定期予防接種は、定められた年齢の範囲内であれば無料です。[6] 受診票は母子健康手帳と一緒に、または郵送で届きます。生後数か月のうちに保健師や助産師が家庭訪問するのが一般的です。

近くに頼れる人が少ない場合は、区市町村の産後ケア事業について相談してください。助産師による宿泊型、日帰り型、訪問型のケアが助成付きで受けられ、休養、授乳の支援、育児の相談などが含まれます。家事・育児のヘルパー派遣や、多言語での子育て相談を行っている自治体も多くあります。

用語集

  • 産婦人科(さんふじんか):obstetrics and gynaecology
  • 妊娠届(にんしんとどけ):pregnancy notification
  • 母子健康手帳(ぼしけんこうてちょう):Mother and Child Health Handbook
  • 妊婦健診(にんぷけんしん):prenatal checkup
  • 助産院(じょさんいん):midwife-run birth house
  • 出産育児一時金(しゅっさんいくじいちじきん):childbirth lump-sum allowance
  • 直接支払制度(ちょくせつしはらいせいど):direct payment system
  • 無痛分娩(むつうぶんべん):epidural delivery
  • 出生届(しゅっしょうとどけ):birth registration
  • 産後ケア(さんごけあ):postpartum care

よくある質問(FAQ)

外国籍でも出産育児一時金50万円を受け取れますか?

受け取れます。日本の健康保険(被用者保険または国民健康保険)に加入しているか、加入者の被扶養者であることが条件です。日本の保険に入っていない短期滞在者は対象外です。

母子健康手帳は外国語版がありますか?

あります。こども家庭庁が10言語版を公開しており、多くの区市町村では希望すれば外国語併記版を受け取れます。

日本で無痛分娩はできますか?

一部の病院やクリニックで可能ですが、通常は追加費用がかかり、平日のみの施設もあります。分娩施設を選ぶ際に対応の有無を確認してください。

赤ちゃんが生まれたあとに必要な手続きは?

14日以内に役所へ出生届を出します。両親がともに日本国籍でない場合は、30日以内に出入国在留管理局で在留資格を申請し、母国の大使館にも出生を登録してください。

出典

  1. 厚生労働省 — 出産育児一時金等について(令和5年4月から50万円、直接支払制度、出産なび) mhlw.go.jp
  2. こども家庭庁 — 母子健康手帳情報支援サイト「外国の方が日本で妊娠したら」(10言語版の母子健康手帳) mchbook.cfa.go.jp
  3. 東京都福祉局 — 妊娠がわかったら(妊娠届、母子健康手帳、妊婦健康診査の公費負担14回) fukushi.metro.tokyo.lg.jp
  4. 厚生労働省 — 第201回社会保障審議会医療保険部会(令和7年10月23日)資料1「医療保険制度における出産に対する支援の強化について」(出産費用の平均) mhlw.go.jp
  5. 全国健康保険協会(協会けんぽ) — 出産手当金 kyoukaikenpo.or.jp
  6. 大阪市 — For expectant parents and parenting(英語ページ:出生届14日以内、在留資格取得30日以内、乳幼児健診、予防接種) city.osaka.lg.jp
  7. 厚生労働省 — 第212回社会保障審議会医療保険部会(令和8年6月18日)資料1「健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)の成立について」(PDF) mhlw.go.jp
  8. 厚生労働省 — RSウイルスワクチン mhlw.go.jp
  9. 厚生労働省 — 育児休業を取得される方へ:2025年4月から出生後休業支援給付制度が始まっています(リーフレット) mhlw.go.jp

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本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断・治療の代替ではありません。必ず医師にご相談ください。

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